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茶屋 

「意地悪をしないで下さいな・・・」
「何を。どんなのが意地悪というのだね。こういう焦らされるのが好きじゃねえか。」
「友秀殿・・・またそんな町民のような言葉使いを・・あっ・・」
友秀の指がくるり、と籐耶の菊座を撫でた。

数軒の茶屋がならんだその二階に友秀は二日ばかり居つづけていた。
「友さん、何を見ておいでだい?」女が背後から声を掛けてくる。
格子の先に見えるものを指さすと、女もぐっと首を伸ばしてそちらを見やった。
「ああ、籐耶かい。」
「たまに聞こえてくる門付けみたいな真似してんのはあの子かい。」
「そうだよ。・・・若様の悪い癖がでそうだね。ああ、いやだいやだ、帰っとくれ。」
女にそう言われ、苦笑いしながら立ち上がった。


「金が欲しいのか?そんなに金に困ってる風情にも思えないけどな。」
友秀が籐耶に声を掛けた。
籐耶は年は下だろうに落ち着いた風情で目を伏せ、頭を下げた。
「お侍さま。私はその先で三味線の直しの店を営んでおります。ここいらの姐さんがたにお世話になってますんでお礼とまた今後もよろしくと言う意味で・・・」
と、そこまで話した時、「籐耶」と友秀の背後から遠く声が聞こえた。

「それでは・・・・」と籐耶はそちらへ小走りに走って行った。その先を見ると、道場で見たことのある、村田という侍だった。
同じく家を継ぐ長男でもなく、ぶらぶらしていて素行が悪いらしく、まるで自分を見ているようだと友秀は思った事があった。

籐耶の肩に手を回し、何かささやき、その手が下りて腰を撫でる所などを見るとどうやら二人は・・・と
友秀はちらっと思ったが、他人の恋路など興味がないので放っておいた。

それから数日後、また二階でごろ寝をしていると籐耶の三味線が聞こえてきた。格子越しに見ていると違う男が寄ってきて睦まじそうに二言三言話すと、男が籐耶の手を取って歩いて行った。
そこで友秀はふふん、と笑った。


「よう、三味線屋は何か他のものも売っているんだろ?」
別の日にたまたま通った路地に床机を出して三味線をいじっている籐耶を見つけたので話掛けた。
「この間のお侍様。他の物と申しますと?」籐耶がまた作ったような愛想笑いをしたので、友秀は、
あがらせてもらうよ、と勝手に店の戸を開けて中へ入った。
中の店の様子は、小さいながらもきれいに整えられいる。後から籐耶が入ってきて「何か。御入用な物がおありですか?姐さん達やお嬢様に差し上げるような物はうちでは・・・」と聞いてきたが、
友秀は履物を脱いでずかずかと上がりこみ、奥のもう一間へ続く襖を刀の柄で開けた。目に飛び込んできたのは緋毛氈に漆塗りの枕。
来いよ、と友秀は振り向いて籐耶に言った。
特別動揺している様子も無く、籐耶は立っていたが、静かに戸を閉め、何かお咎めが?と聞きながら部屋に入ってきた。
俺は役人じゃねえ、そんな無粋な真似はしねえよ、と言って手を引き、床に籐耶を組み敷いた。

赤く小さな胸の突起を捻りながら、「こっちが本業かい?」と目を閉じている籐耶に聞くと、籐耶は少しうっとりとした目を開け、まっすぐ友秀を見、両腕を絡ませてきた。
「違いますよ・・・好きなだけです・・・。」と色っぽく笑った。「三味線をお客人と弄っていると何故か私に興味を示す方が多くて・・・あ・・・っ。

20090330a.jpg



ん・・・。お金はお客人が勝手に置いていってくれるだけ・・・ああ・・・」
籐耶の大きくなってきたモノを強く扱いてやると、腰を揺らした。
そんなに好きなら店に入ったらどうだ、と笑いながら言うと、「嫌な方とはこちらもお断りですよ・・・」と吐息まじりに答えた。
色づいて誘っているような菊座に深く挿入すると、きつく絡み付いて来る感覚に友秀は悦楽に浸った。

「友秀殿。」
「友秀でいい。そんな立派な立場じゃねえよ。」
それから何回か籐耶の所にやってきては床を共にした。
「お前は誰が好きなんだ?」と聞くと「友秀殿ですよ。」とさらりと言う。
「遊女と同じだな、その手管は。解っててはまっちまうんだけどな。」
「最近は友秀殿がずっといらっしゃるからまっとうな商売しかしてませんよ、ご存知でしょう?」

戸が開いて、いかにもいやらしそうな商人風情の男が入ってきた。奥の部屋から友秀が睨みをきかせていると、適当に三味線の話をしてそそくさと出て行った。
「商売あがったりですよ。」と籐耶が笑いながら言うと、友秀がいいじゃねえか、と後ろから胸に手を差し入れ、唇を吸った。